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ライブレポート3.26 ZeppDiverCity KANDAFUL WORLD Vol.10

20183月にデビュー5周年を迎えた神田莉緒香が、アニバーサリーイヤーの最後を締めくくるイベントとして2019326日にZepp DiverCity TOKYOにてワンマンライブ「KANDAFUL WORLD Vol.10」を開催した。

 この日は神田の27歳の誕生日。Zeppと名のつく会場でワンマンを行うことは彼女が前々から公言してきた夢であり、2018年は「Road to Zepp」を掲げ47都道府県ツアーや「KANDAFUL WORLD 拡大計画 Zeppステージ一緒に作っちゃうぞ大作戦」と題したクラウドファンディングも行うなど、この日に向けて彼女自身、彼女のチーム、そして彼女の音楽を愛する人々が力を合わせてきた、まさに「特別な日」である。そして彼女はこれまでの活動で出会ったすべての人の力を借りて、特別な時間と空間をを作り上げた。

 ステージには高層住宅やブランコ、ソファなど、白を基調とした街並みのオブジェ。そこにギター/サウンドプロデューサー中村タイチを中心としたベース、ドラム、キーボードの4人編成のバンドメンバーと、バイオリンとチェロの2名のストリングスチームが登場すると、最新作『主人公になれなくても、』のラストに収録されている「モノローグ」の神田による歌詞朗読が流れる。ステージに登場した神田が「走れハリネズミ」を1コーラス弾き語りで披露すると「はーじーまーるーよー!」と声を上げ、それを合図にバンドメンバーが一斉に音を奏でだす。会場はたちまち鮮やかな歌声と音色で満ちていった。

 

 「今日はわたしたちとみんなで忘れられない1日にしましょう!」と語り掛けるとアップテンポの「僕と君のストーリー」、「スターダスト」を届ける。白いオブジェたちは照明の色味によって一気に装いを変え、ミラーボールの光で客席まで鮮やかだ。

 神田が27歳になったことを自己申告すると、場内からは多数の「おめでとう!」の声とあたたかい拍手が。「トクベツ」ではハンドマイクでパフォーマンスし、笑顔で脇締めダンスとクラップを呼びかける。集まった老若男女が一斉に脇締めダンスをする様子は非常に微笑ましい。続いてはチェリスト・柏木広樹を招き、彼とふたりでレコーディングをした「今夜ひとり、見えない月の下で。」を披露。ステージ上に広がる満点の星空とともに味わう繊細なピアノとチェロの音色は非常に豊かだった。

 

 続いては中村がアコースティックギターを抱えてステージに現れ、神田は彼とともに付き合いの長さを感じさせる和気藹々としたMCを繰り広げる。思い出話に花を咲かせたあと、中村がサプライズで誕生日プレゼントを授与。その中身は中村が日ごろ精を出す筋肉増強サプリで、そのチョイスに場内が笑いに包まれた。中村のアコギ演奏でもって、神田の始まりの曲であり、中村との初タッグ曲である「boyfriend?」を披露。ボサノバ的なソフトなギターに軽やかな歌声を、観客も耳をそばだてるように聴き入った。

 続いてはステージにバンドメンバーが集結。5人で「TOKYO/OSAKA」のアコースティックアレンジを1マイクで演奏する。1マイクならではの素朴な音質も相まって和やかなキャンプファイヤーのような空気感が生まれ、客席からも自然とクラップが沸き上がった。「会えない時間がもどかしいのは恋愛に限った話ではないと思ってます。でも『寂しい』や『うれしい』という気持ちが巡り巡って、今日という日はあるんだと思います。そんなめぐり逢いに愛をこめて」という言葉のあと、ストリングス隊を合わせたフルバンド編成で「めぐり」へ。ステージは一気に淡い桜色に染まり、間奏のピアノとバイオリンの旋律は花びらのように麗らかだった。

 

 本人も「届けることや伝えることを諦めないで良かった」と語っていたとおり、神田はMCのたびに気持ちを感情豊かに丁寧に言葉にしていく。「今日という日を選んでくれたことがうれしい」や「まだまだ諦めずにひたむきに続けていきたい」と語り、彼女のレギュラーラジオ番組で公募した言葉たちを歌詞に取り入れた「ここから」を歌唱。自然体で嬉々として歌詞とメロディを辿る姿に客席もクラップとワイパーで応える。シンガロングが巻き起こるラストは、前半の大きな名場面となった。

 楽器隊によるインスト演奏のあとは、衣装チェンジをした神田が登場。「Welcome to the music」は煌びやかで堂々としたサウンドスケープとライティング、ラスサビとともに飛び出した銀テープが、ショルキー姿の神田をより華やかに映した。「後半戦でございます。こっからガツンとかっこよくキメキメでお届けしますのでみんな覚悟しててください!」と宣言すると、「星」と「MOONSHOT」を凛々しくパフォーマンス。激しいギターが響き渡った「YELLOW!」でアグレッシブなグルーヴがどんどん巨大化していき、タイトルの通りパワフルな「FULL-DRIVE」へとなだれ込んだ。

 

 ハンドマイクへとチェンジした神田はステージを動き回りながらメンバー紹介をしていく。その際中村がギターソロでハッピーバースデーのメロディを奏でると、会場は大いに沸いた。「汗かく準備できてますよね!? ここだけ夏に行っちゃいましょう! みんなで世界でいちばん熱い場所にしましょう!」と彼女が叫び「炭酸ペットボトル」。ハンドマイクでジャンプしたり、しなやかに身体を動かしたりと溌溂と歌う彼女に触発されて、観客もタオルや銀テープを回すなどして興奮を表現する。神田がそれをさらに煽ると、アウトロではこの日いちばんとも言える軽快なクラップが鳴り響いた。

 再びピアノの前に戻った神田は「愛ってなんなのかわからなかったけど、名残惜しくなる気持ちとか、楽しくてあっという間だなという気持ちも、愛と呼んでいいんだと知ってたんだと思います。でもそれに自信がなくて言えなかったんだと思う。でもこの会場を愛と言える自分になりました。それはみんなのが教えてくれたことです」と感謝を告げる。そしてその想いをすべてラストの「愛と叫びたいんだ」に託した。神田のピアノと歌をバンドメンバーがしっかりと支えるそのサウンドスケープは、穏やかであたたかく、切なさと喜びもはらむ。タイトルの通り「愛と叫びたい」という彼女の想いがダイレクトに心に飛び込んでくる、優しさに満ちた歌と演奏だった。

 アンコールで再び衣装チェンジをしステージに戻ってきた神田は、音楽を11のものとして届けることができるようになったのはこの5年間の活動を経たからだと語る。ソロデビュー前とソロデビュー後を振り返りながら自身の変化と気付きを真摯に語り、「かっこ悪いところや弱いところとかを全部さらけ出して、やっとここにいる一人ひとりに見つけてもらえたんだなと強く感じた」と穏やかに話した。

 そのあとに披露された「スポットライト」は、リスナーからの想いをライトに例えた曲。観客が携帯電話のライトを彼女に向けると、彼女は「すごく綺麗、お星さまみたい!」と笑う。そんな観客からの11のスポットライトのなかで歌うことには、とても大きな意味があった。歌詞の意味はより深みを増し、歌声には誠実な気持ちが溢れる。一人ひとりのスポットライトに見守られる彼女は、とても美しく照らされていた。そして彼女が「聴かせて!」と言い観客に歌声を求めるそのシーンも、彼女から観客一人ひとりに向けられたスポットライトだったのではないだろうか。

 「この光景が広がってるだなんて、夢なんじゃないかと思うレベル」と語る彼女は再び自分の気持ちを言葉にし始める。醜い気持ちでいっぱいになるたびに、自分自身の人生をないがしろにしているような気がして自己嫌悪に陥ったと話す神田。「あの時『もう辞めよう』と思わなければ生まれなかった曲があって、その曲がなかったら音楽を続けてなかったと思う。それがあったから、今日歌った曲たちが生まれたんだと思う。それを教えてくれたのは紛れもなく、みんな一人ひとりです」と観客の顔を見て語り掛けると、「主人公になれなくても、」に込めた想いを明かし、同曲を披露する。話したことがそのまま歌詞になっているこの曲に、彼女はより生々しい気持ちを落とし込んだ。涙で顔がぐしゃぐしゃになるのと同じくらい切実さに溢れていた。

 最後の曲を前に名残惜しそうに「あーあ、終わっちゃうよ。やだなあ」とつぶやいた彼女は、「次の夢を見るために最後の曲を歌おうと思う」「また次の夢を見つけ出せそうです」「Zeppでのライブを夢だと言い続けてきてよかった」などと述べると、飼っていたハリネズミがここの場所に導いてくれたと晴れやかに語った。「ハリネズミの針路」の歌い出しの「そして僕らは旅に出る」という歌詞はまさにこの日にお誂え向きで、彼女の歌声も風に乗る鳥のようにどこまでも遠くまで飛んでいった。きっとこの先も彼女はこうやっていろんなものを越えることで前へ前へ進んでいくのだろう――そう思わせる象徴的なシーンだった。

 

 鳴り止まないダブルアンコール。ライブTシャツとジーパンで登場した神田は「こんなしんみり終わってたまるかってんだーい!」「今日だけは自分を主人公にさせてください!」と言い観客を笑わせ、この日出演した全員で最後に「ハッピーソング」を届けた。歌詞とかけられた虹色の照明はとても目覚ましく、観客一人ひとりと目線を合わせるように笑顔で歌う彼女の姿とぴったりだ。最後の記念撮影では、サプライズの巨大バースデーボードが登場。2時間半にわたるステージは大団円で幕を閉じた。

 神田莉緒香というシンガーソングライター、そしてひとりの人間は、この日またひとつのターニングポイントを迎えたと言っていいだろう。その針路の行方も気になるし期待ところだが、今はそれよりも、27年という人生を総動員し、この夢の大舞台を成し遂げた彼女に心からこの言葉を贈りたい。本当におめでとうございます。

 

取材・文 沖 さやこ

写真 脇坂崇充

 

神田莉緒香ワンマンライブ
KANDAFUL WORLD Vol,10
■3月26日(火)
会場:ZeppDivercity
開場 18:00 / 開演 19:00

メンバー:
Vo. & Key. 神田莉緒香
Gt. 中村タイチ
Ba. 種子田健
Dr. あらきゆうこ
Key, 清野雄翔
Vl. 天野恵
Vc. 吉良都
Special guest Vc 柏木広樹

「KANDAFUL WORLD vol.10」セットリスト
1.走れハリネズミ
2.僕と君のストーリー
3.スターダスト
4.トクベツ
5.今夜ひとり、見えない月の下で。
6.boyfriend?
7. TOKYO/OSAKA
8.めぐり
9.ここから
10.Welcome to the music
11.星
12.MOONSHOT
13.YELLOW!
14.FULL-DRIVE
15.炭酸ペットボトル
16.愛と叫びたいんだ

アンコール
en1.スポットライト
en2.主人公になれなくても、
en3.ハリネズミの針路

W-en.ハッピーソング

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